秘密の地図を描こう

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 レポートのためには、自分が何故負けたのかを確認しなければいけない。だから、と今日のシミュレーションの結果を何度もモニターに映し出していた。
「前回よりはマシだ、と思ったんだが……」
 どうしても、キラの動きに翻弄されてしまう。
 しかも、だ。彼の動きは自分の予想の範囲を超えている。それは、自分がまだマニュアル通りの動きしかできないと言うことだろうか。
 それとも、と心の中で呟く。
「ともかく、まだまだ未熟だ、と言うことだな」
 キラに勝てる日が来るとは思っていない。しかし、せめてその背中を守れるようにならないといけないのではないか。
「努力あるのみ、だな」
 口の中でそう付け加えたときだ。いきなり部屋のドアが開く。
「シン、早かったな」
 ため息とともにそう言い返す。
「僕」
 しかし、返ってきたのは予想もしない声だった。
「キラさん?」
 いったい、何故、彼が……と思いながら慌てて振り向く。そうすれば、ザフトの軍服に身を包んだ彼が立っているのが目に見えた。
「ギルさんから緊急連絡が入ったから、ちょっと相談に来たんだけど……」
 まだ確認していないようだね、と彼は付け加える。
「ギルから?」
 いったい何なのか。そう思わずにいられない。キラがこちらまで足を運ぶくらいだから、かなり厄介なことではないか。そう考えながらメールを確認した。
 その瞬間、心臓が早鐘を打つ。
「ラウが……」
「そうだって。だから、僕は先に帰っていようかと思うんだけど」
 レイはどうするか、とキラは問いかけてくる。
「ギルさんからの指示だから許可は出ると思うけど……」
「俺は……」
 本音を言えば、一緒に行きたい。
 だが、それではいけない……とささやく声もある。
「もうすぐ週末ですから、そのときに外出許可を取って行きます」
 今は訓練の方が重要だ、とレイは言う。
「そうだね。君らしいかな?」
 ふわりとキラは微笑みながらうなずいてみせる。
「それに、ラウさんもきっとそうしろって言うのかな」
 どうだろう、とキラは首をかしげた。
「だといいですけど……怒られるかもしれません」
 軍に入ったことで、とレイは苦笑とともに告げる。
「それなら、僕は何を言われるのかな」
 あれこれと言われそうだな、とキラはため息をつく。
「文句を言われることは確実だし」
 恨まれているかもしれない、と彼は続けた。
「そんなことはありません」
 彼がそう考えても仕方がない言動をラウはとっていたのだろう。しかし、それは手に入らないものに対する好意の裏返しだったに決まっている。

「……そうかな?」
「そうです」
 自分がそうだったから、と心の中だけで付け加えた。
「もし、ラウがそんなことを言っても、俺はキラのことを恨んでいませんから」
 だから、安心してほしい。そう続ける。
「うん、ありがとう」
 言葉とともにキラは微笑んだ。
「じゃ、先に帰っているから」
 とりあえず、と彼は続ける。
「一人で?」
 まさか、と思いながら問いかけた。
「ニコルが送ってくれるって。なんか、お父さんと話をしてくるって言っていたよ」
 内容は想像が付いているけど、とキラは付け加える。
「たぶん、すぐにレイ達にもわかると思うよ」
 それに関しては、と彼はさらに言葉を重ねた。
「そうですか」
 なんか怖いと思う。
「じゃ、見つかるとやばいから、行くね」
「はい」
 立ち上がる彼に、少しだけ寂しく思う。それでも、見つかったときのことを考えれば仕方がないのか。
「じゃ、また後で」
「はい」
 そんなことを考えながら、彼の背中を見送った。

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最遊釈厄伝